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日本一の「マルチアスリート」が考える「正しい遊び方」【後編】

トライアスロンのスイム・バイク・ランを全てオフロードでやる競技「エクステラ」を中心に、アドベンチャーレースやトレイルランニングなど、様々な競技で第一線の選手として戦う「プロ・マルチアスリート」小笠原崇裕さんのインタビュー。

後編では、自然の中に飛び込んでみることの重要性や、日本におけるアウトドアスポーツの発展の可能性や、その課題について聞きました。

Interview by Yoichi Goto | Photos by Jun Matarai

2015.12.17[Thu]

「ドブ川で泳いでみる」事でしか得られない感覚

——小笠原さんは子供の時から自然と常に触れ合う生活をされていて、MTBやエクステラにプロとして参戦する際にも、「自然」が重要なキーワードだと言われていました。今、特にスマートフォンが子供にまで普及して、外で遊ぶ時間は大人も子供も減っていると思うのですが。

小笠原:実体験をしてみないと感じられない喜怒哀楽の感情とか、人間の五感から受ける感覚っていうのが有ると思うんです。痛いとか、面白いとか、かゆいとか。

例えばマレーシアのレースに行くと、まっ茶色のドブ川を泳いだりします。普通の人だったら、どんな菌がいるかわからないし、泳いだらダメって言うのかもしれませんが、まあ、とにかくそこでレースが開催されていて、僕も「臭いなあ」とか思いながら泳ぐわけですよ。でも、その後も何もなくピンピンしてるので、「ああ、大丈夫なんだ」ってわかる。そういった経験・体験を通じて感じる、面白いとか危ないっていう感覚はその場に行かないと絶対に得られないですよね。

そういう事をたくさん感じた方が良いと思うし、自分も感じたいといつも思ってます。子供も、そういう体験が減っているからなのか、おとなしくなってる気がしますね。

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エクストリーム化するスポーツが抱える「グレーゾーン」と地域のコミュニティ

——日本でもトレイルランが流行ってますが、海外だと2000m以上の高所を走り抜けるレースがあったり、MTBのレースを見ていても最近はジャンプの大きさがすごく大きくなっている気がします。

小笠原:そうですね。例えばMTBの中でも「クロスカントリー」という種目はもともと、競技時間が約2時間30分と長くて、持久力を競う種目だったんですが、最近はそのコースの中でも大きなジャンプ台があるレースが増えています。クロスカントリーなのに、15年くらい前だったら「ダウンヒル」という山を短時間で下る種目で見たような人工のジャンプ台がある。持久系の競技も、テレビで映えることやオリンピックなどの大会で観客を入れる事を考えて「魅せる」要素を入れ始めていますね。アクションスポーツとエンデュランス系(持久系)スポーツが融合してきているイメージがあります。

レースの中でアクションが増えるのは選手としても楽しいですし、魅せる走りをするのは好きなので大歓迎ですね。ジャンプ台の近くは観客席を有料にできたり、テレビに映りやすいのでバナー広告の収入が増えるなど、収益の面でもメリットは有るんだと思うので、どんどんやったら良いと思います。

——アクションスポーツでも激しいものは「エクストリームスポーツ」と呼ばれたりすると思うのですが、そういった競技の人口は増えているんでしょうか?

小笠原:増えてきていると思いますね。YouTubeで誰でも世界中の選手の映像が見れますし、GoProとかドローンでこれまでと違う角度から撮った面白い映像が溢れてますから。ネットで情報を集めて通販で道具を買えて、一人でも簡単に始められるのが原因だと思います。

道具も以前と比べると大きく進化していて、ボコボコした路面でも安定したライディングが出来たり、女性でも指一本でブレーキがしっかりかかるようになって、初心者でも簡単に楽しめるようになっています。

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——誰でも始められるのは良いことだな、と思う反面、MTB、トレイルランニング、バックカントリースキーなど、山をフィールドにするスポーツを安易に初心者が始めてしまって事故に遭ったり、登山者からクレームが入ったりといった事例が問題になる事も多くなっている気がします。

小笠原:そうですね。そういったスポーツを楽しむには、登山道や公園など、他の人が別の目的で使っている場所に入らないといけない事が多いので、必ず「グレーゾーン」になる場所が存在します。「グレーゾーン」は競技や地域それぞれによって違うので、まずその地域のコミュニティに入ってその境界線を理解しないといけないのですが、何でも一人で始められるために、初心者がグレーゾーンに安易に行ってしまうのが問題だと思います。

例えばこの町でMTBを始めたいなら、今日取材を受けているこの轍屋さんみたいなお店に行って、地元のコミュニティを教えてもらうとか。そういうステップを踏まないで何も知らずに一人で近くのトレイルに行ってしまうと、道が混雑する時間に走ってしまって怒られるかもしれませんが、分かっている人に聞いて人が少ない時間に行けば怒られない。

ハウツー本でも、ネットでも、装備だとか、一般的なマナーみたいなことしか書いてませんけど、例えば山を取り巻く環境だとか、どういう道があって、どういう問題がこれまであった、とかそういうことは分からないですよね。でもコミュニティの中にある地元のショップだったら、そういうのを全部知っていて、教えてくれたりする。そういうのを理解してから始めて欲しいなと思いますね。

——具体的に「グレーゾーン」がある場所で活動するということを踏まえて、気をつける事ってどういう事が有るんでしょうか?

小笠原:僕がしつこく教えている事の一つに、「人前で怪我をしない、させないテクニック」があります。人がいる公園で怪我をしてしまうと、やってはダメという事を言われやすいので、そういう公共の場所で怪我しないようなスキルを教えたりしていますね。具体的には、バランス感覚とか、集中している中でも周りをしっかり見ることとか、犬が来ないのか、子供が来ないのか、人が来ないのか、といったことを予測するといったトレーニングをしてます。こういうのは一人でやってるだけではわからないことがあるので、教えてあげる事が重要だと思ってます。

あとは、自分がMTBでトレイルを走っている時、タイヤ、特に後輪をロックさせないようにすごく気をつけてます。下手な人がブレーキし過ぎると平らなところがV字型に削れてそこに雨水が流れ、更に削れて登山道が荒れてしまうんですね。これはもちろん路面を保護するためにも重要なんですが、それ以上に、MTBのタイヤの跡が残っていることで同じトレイルを歩くハイカーに嫌悪感を抱かせないという意味が大きいです。後でそこを歩く人達のために必要なスキルなんですが、こういうことも人に聞かないとなかなか分からないことなので、さっき言ったように、まずはコミュニティに入って、他の人と一緒にやってみる、というのが重要なんです。