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プロブレイクダンサーBBOY TAISUKEが考える「新しいカルチャーの育て方」【後編】

アニメ、ゲーム、映画、演劇。日本のカルチャー、エンターテイメントのファンが世界中に存在するのは周知の事実である。スポーツでも、柔道、空手など、日本から世界に広がったもの、相撲のように世界中に知られているものは少なくない。しかし、日本のヒップホップやストリートのカルチャーが世界的なアスリートやアーティストを生み出していることはあまり知られていない。

日本のストリート、いわゆる「アンダーグラウンド」のカルチャーは、歴史があり、深く、濃い。一方で、狭く閉じられた世界という一面もあるため、マスメディアで取り上げられにくく、イベントの運営や新しい選手の育成に必要なお金が集まらないという構造的な問題も抱えている。

そんな日本のストリートカルチャーに変化が起きている。ダンスが2008年に義務教育になり、2020東京五輪の最終候補種目に、サーフィン、スケートボードが残った。また、デジタルメディアに投稿されたダンスやスケートボード、BMXの映像は、数十万・数百万人の視聴者を集めることも珍しくない。一部の限られた人しか知らなかったストリートカルチャーが確実に一般の人の目にも触れるようになってきている。

Interview by Yoichi Goto | Photos by Naomi Okubo

2016.08.03[Wed]

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前編に引き続き、若干10歳で日本のブレイクダンスシーンのトップに躍り出て、世界最高峰のソロダンスバトルイベントである、RED BULL BC ONEで日本人史上最高位の準優勝を2度獲得しているBBOY TAISUKEに、世界で認められている日本のストリートカルチャーを大きく育てるためには何が必要なのかを聞いた。

Taisuke vs Lilou – Battle 2
Red Bull BC One World Final 2013 Seoul

新しいカルチャーを育てるのに必要なこと

後藤:いまブレイクダンスをサポートしているのはどういう企業なんですか?

TAISUKE:企業のジャンルで言うと、世界的に見てもまだエナジードリンク以外は無いと思います。

後藤:なるほど。エナジードリンクの企業がアンダーグラウンドのカルチャーに投資して、新しいアーティストやアスリートに活躍の場が出来た事は素晴らしいですよね。

ただ、エナジードリンクやアパレルの会社のように、スポンサーシップの結果が商品の販売に繋がることが分かりやすい企業「以外」のサポートが、特に日本で、これから新しいカルチャーを育てるために必要な気がしています。

ダンスがそういう企業のサポートを得るためには何が必要だと思いますか?

TAISUKE:俺も今トライしているところなので、難しいですね。

アスリートとか、アーティストとして企業にお金を払ってもらって「プロブレイクダンサー」になってる人は世界でもほとんどいないんで。

企業の商品提供っていう形で活動をサポートしてもらえるのも有り難いですけど、稼がないとプロではないし生活出来ないので、やっぱりお金をもらわないといけませんしね。

自分のことを商品だと捉えると、買ってもらうためには「戦っていない時間」も自分の商品価値に加えることが必要だと思ってます。例えば、サッカー選手や野球選手ってオフの時はユニフォームを着てないので、その時はユニフォームのスポンサーは恩恵受けてないですよね。でも本田圭佑選手は飛行機から降りてくる時に両手に着けてる時計が話題になったりしましたよね。

ダンサーの格好良さは「ライフスタイル」だと思うんです。みんな普段着てるものにもそれぞれのスタイルがあって、例えば「いつでも踊れる格好をする」と決めてるダンサーもいます。その格好良さを買ってもらうために、まずは自分と向き合って、オフの時も含めた自分の「ライフスタイル」を確立しないとダメだと思いますね。

そうやって作り上げた「格好良さ」を人に伝えるコミュニケーション能力とか、そもそもそれを他人に伝えようとするアクションを起こすことも必要で。俺はエージェンシーに所属してたこともありますけど、ブレイクダンスのカルチャーとか、自分で磨いた「格好良さ」を企業に伝えるのって今世の中にあるエージェントやマネジメント会社には無理だと思うんです。

だから、俺は自分で自分のセールス資料を作って、自分で企業に売り込みに行く。カルチャーがないところにカルチャーを育てるためには、先頭に立つ俺みたいな存在は、そういうことまでやれないとだめなのかなと思います。

WIDELUX_taisuke003

後藤:エージェンシーとか、日本だと「広告代理店」とか呼ばれてる会社にはアスリートと企業の間に立って、お互いの考えとかカルチャーを翻訳する機能も有ると思うんですが。どういうエージェンシーがあれば、ブレイクダンスとか、アクションスポーツ、エクストリームスポーツの「プロ選手」のマネジメントが出来るんでしょうか?

TAISUKE:瞬間的な知名度とかメディア露出を買うような考え方ではなくて、一緒に成長したいと思う若いアスリート・アーティストを探して、カルチャーごと育てていく、っていう考え方を持ってくれていることが必要ですね。

野球だったら、高校で甲子園を目指して、ドラフトにかかったらプロになれて、っていう「道」があるじゃないですか。俺らはそういうのが、全く無いので。

「カルチャーごと育てる」っていう考え方がエージェントの根本にあれば、まだ有名じゃ無いけど、今まさに「道」を切り開いている人もサポートしようっていう事になるし、逆に多少メディア露出が減ってきたとしても、それまで「道」を作ってきた、カルチャーの土台を作ってきた人も切り捨てたりしなくなると思うんですよね。

新しいカルチャーが育つには、「前例の無いこと」にお金を張る企業がないとだめだと思います。アメリカと違って日本には「誰もやったことが無いこと」に賭ける企業が少なくて、それだと、日本に新しいカルチャーは育たないですよね。

もちろん、俺らが変わらないといけないところも有ると思うので、「こうして欲しい」って言ってもらったりして、コミュニケーション取りながら、一緒に「道」を作って、「子供たちの目指す場所」を探しませんか、って言ってますけど。なかなか難しいですね。

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もし50億円あったら

後藤:最近、「世界のDJ年収ランキング」とか話題になるじゃないですか。上位の人は50億くらいもらってますよね。例えばもし、TAISUKEさんが50億円持ってたら、どんなことをしますか?

TAISUKE:それだけお金があったら、海外の仲間のダンサーを日本に呼んで、世界大会やりたいですね。実は世界大会って、日本ではなかなか開けないんですよ。国、自治体、企業のサポートがつかないので。

日本は世界でも最も古くからダンスのカルチャーが存在する国の一つなんですけど、世界レベルの大きなイベントは、RED BULL BC ONEっていうブレイクダンスの大会が、今年2016年に2010年以来初めて開催されるくらいで。ブレイクダンス以外となると、本当に少ないと思います。そういう大会を日本で開く事は、絶対に日本のダンスシーンのためになるので、お金があったらそういう使い方をしたいですね。

オランダに、「The Notorious IBE」っていうヒップホップとダンスのイベントがあります。
ダンスイベントとしては、ソロ、5人グループ、女子、キッズ、30歳以上とか、いろんなふうにカテゴリ分けされたダンスバトルをやるんですけど、ダンスだけじゃなくて音楽のフェスティバルでもあるんです。いろんなトラックメイカーが同じ音源で、曲を作って披露しあうイベントがある。グラフィティアーティスト(*1)がいたり、ヒップホップと呼ばれるも全般をやっている。そういうのは日本にはないですよね。

IBE 2014 OFFICIAL AFTERMOVIE

後藤:TAISUKEさん自身がプロデュースするなら、どんなコンセプトのイベントにするんですか?

TAISUKE:ブレイクダンスに限定せずに、オールジャンルでやりたいですね。日本には「立ちダンサー」っていう言葉があって、俺らのやってる「地面を使って踊る」ブレイクダンスと区別されているくらい、ジャンルの違うダンサーの間に壁があって交流が少ないんですね。俺はよく他のダンスの舞台も観に行きますけど、そういうことをしているダンサーは珍しい。

ダンスって戦うものもあれば、見世物の時もある。身体で感じてもらうときもあるし、作品を観る楽しみ方もあって、音楽を聞いて自分の身体を動かして楽しむという部分もある。俺がプロデュースするなら、一週間のダンスウィークにして、それが全部が入ったものにしたいです。

例えば 、いろんなジャンルのダンスの基礎知識や歴史を学べるワークショップがあって、実際に身体を動かせる場所がある。夜にはダンスセッションができる場所があって、DJがいて、音を流してもらって、みんなが一緒に踊ってる。

ダンサーが作ってる舞台も楽しめる。1日ごとに違う舞台にして、「海外のチームはこういう舞台をやれるんだ」、「日本はこういう舞台をやれるんだ」っていう学びがあって。演出や振り付けを考えることを「コレオグラフ」っていうんですが、参加者と振付師が一緒に考えて舞台を作れたり。

「ここにくれば、ダンスの歴史が学べるんだ」、とか、「あそこに行けば、ダンスのワークショップがやっていてダンスが教えてもらえるんだ」、とか、「あそこに行けばこの人の舞台が見れるんだ」、とか。目で見て楽しんで、音を聴いて、実際踊ってみて。

それで一週間の最後には、各ジャンルのダンス大会がある。ダンスに自分たちの思いをかけている人たちの「戦い」を観る。そういうのがトータルでできればいいのかなって。

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後藤:すごい。聞いてるだけでワクワクしますね。私はダンスやったこと無いんですけど、絶対行くと思います。

TAISUKE:「世界のDJ年収ランキング」って、要は金額が大きいから話題になるじゃないですか。ダンサーでもそのくらい稼ぐ人が出てきたら、周りも変わってきて、カルチャーも一気に活発になっていくと思います。

俺はダンスの世界では、そうやって周りを変えて、カルチャーを変えていかないといけない存在だと思ってるので、そのくらい稼ぐブレイクダンサーになりたいですね。


*1:スプレーやフェルトペンなどを使い、壁などに描かれた落書きのこと。一部は芸術とされ、世界的に有名なアーティストもいる。

  • BBOY TAISUKE
  • プロブレイクダンサー
  • 1990年長崎県佐世保市生まれ。8歳からブレイクダンスを始め、2年後に日本最大のダンスイベントで準優勝する。11歳で日本代表チームに選ばれ、世界大会で準優勝。日本のキッズダンスシーンの先駆者として活躍。世界最高峰のソロダンスバトルイベントである、RED BULL BC ONEで日本人史上最高位の準優勝を2度獲得。日本のストリートシーンを引っ張る若手の1人である。
  • YOICHI GOTO
  • Creative Researcher / / dentsu
  • 2011年電通入社。社内シンクタンクである電通総研の研究員。主なリサーチ分野はエクストリームスポーツ。