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「ポスト・トゥルース時代のトーフビーツ(仮)」──tofubeats × 若林恵 トークイベントレポート【後編】

作品づくりの先にある他者と、過去の自分

若林:冒頭の話にちょっと戻るんですけど、今回のトーフくんのアルバムは、頭を動かしながら作っている歌詞やテーマの部分と、手を動かしながら作っている実際の音の部分が、明確には合致していない印象をもっていて、どちらかといえば「手」の方が圧倒的に好調なアルバムだと思うんです。

これは、どんなものづくりにも言えると思うんですけど、手を動かすことは精神衛生上も良いことだという気がしていて、その行為を通じてまず自分との対話が生まれると思うんですが、よく言われる「自分との対話」って、結局自分と社会との対話を、その作業を通して繰り返すことのような気がしてます。で、その社会って、要はお客さんってことにはなるんですが、誰か特定の個人や、あるペルソナやクラスターを睨んでやるのとも違う、なんか主観と客観とが独特に入り混じったものだという気がするんです。で、ちょっと聞きたいのは、トーフくんって作品をつくるにあたって「お客さん」ってものを、どう見てるのかな、ってことなんです。

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トーフ:「誰かが聴いてくれる」と想定して作ってはいます。それはもう1人の自分みたいな存在ですかね。「自分みたいな人って世の中に他にいるのか」を問うといいますか。だって、「自分が良いと思うものはきっと他の人も良いと思ってくれるはずだ」と思わなければものは作れないですよね。あとは時折マネージャーなど身近な人に聴かせてみますね。マネージャーは10年くらい一緒にやっているんですが、絶対に「いいよ」としか言ってくれない(笑)。そこで自分が「ホンマに?」って思ったら、それは自分に迷いがあるってことなんです。人に投げてみることで分かるという。そういう存在は何人かいますね。

若林:例えばSNSなんかであれこれ言うような人たちは、読者としてはそこまで信用しちゃいけないと思ってるんです。ありがたい読者ではあるんだけれども、そういう人って基本的に移り気な人たちなんだろうって思うようにしてます。というのも移り気な人たちを相手に仕事をするのって辛いんですよね。一方で、シェアしたり声を上げて評論したりはしないんだけど、ただ、奥のほうで、じーっとこちらを見つめている、何も言わないお客さんっているような気がしてて。間違えたことをすると、サササーっと無言で立ち去ってしまうような。僕はそういうお客さんが一番大事で一番怖いんです。でも、そのお客さんが「自分だ」って感じはしないんです。やっぱり他者なんです。

トーフ:たしかにそうですね。「自分みたいな人」っていうのは、ぼくの場合は、「昔の自分」という言い方の方が正確かもしれません。今こうして壇上に上がる権利をもっていない、うだつが上がらない頃の過去の自分に対して、どう報いるのかが大きいかもしれない。裏切らない、というか。なので、インタビューでも常にそこを気にしています。「これを読んだら、10年前の自分がmixiの日記で怒るやろな」といったことは言わないように気をつけてますね(笑)

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若林:ああ、なるほど、そうか。それはそうかもしれない。自分の歩んできた道を裏切ってないかどうか、じーっとこっちを見てる「昔の自分」。そりゃ、たしかにこわい。

トーフ:メディアに取り上げてもらうことで聴いてくれる人が増えるのはありがたいことなんですが、でもそれで本当のファンとして定着する人はそうそういないと思うんです。人が紹介したものを聴く人であれば、また別の人が紹介したものを聴くようになると思うので。過去の自分は、自分の好きなものを決めるのに一生懸命でした。だからこそ聴いてる人にもそれくらい一生懸命出会ってもらいたいし、自分が好きなものを考えるのはすごく大事なことだと思うんです。

逆に自分が人に対してそう思うのであれば、自分もそう思われていると。だからこそ厳しさを自分にも植えつけていかないといけないんですよね。油断をしたら聴いてくれる人は全員いなくなってしまうと思っています。そういう人たちを裏切らないためにも、毎度、違うことをしていかないといけない。毎度、同じことをして、ラクに暮らしていこうとは思ってません。逆の立場だったら「こいつラクしやがって」って昔の僕は絶対Twitterに書きますからね。常にそうやってシビアにみている自分がいます。

過去の自分と対峙しながら、「新しさ」を証明していく

若林:トーフくん、何歳なんでしたっけ?

トーフ:90年生まれなので、今年27歳ですね。

若林:27歳で「昔の自分」って言えるのは、やっぱりすごいと思うなあ。

トーフ:でもインターネットをやっていると、10年前のログとか全部残っているんですよ。それは全部自分に返ってくる。僕が中学校のときに作ったダサい曲も、mixi日記の誰かの悪口も、誰かしらキャプチャに残して持ってたりしますから。でも逆に、それらをなかったことには絶対しないと決めています。そう決めちゃえば、良くなっていくしかなくなるので。

自分の過去の鬱屈とした感情に縛られていると言ったら縛られているのかもしれませんけど、その時の自分が残っているから「今から全身日焼けしてヤンキーになります」と言えないし、そうしたら不誠実になってしまう。だったらこの道の先には何があるか突き詰めてみたいですね。

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若林:ちなみに「自分が誰か、同世代や後輩たちのために扉を開いていく」みたいな感覚はあります?

トーフ:あんまりやってる自覚はないんですけど、やってないとも思わないですね。出来てることはあると思います。僕がいることでオタクっぽい人でもクラブに行きやすくなっただろうし、インターネット経由で世の中に出ていく人が増えたんじゃないかなと。あと、J-POPシーンの中に他に自分みたいな存在が他にいないってことは、逆に居続けなきゃいけないかなとも思います。

若林:トーフくんがJ-POPという領域に居ることによって、トーフくんのような人が増えたりJ-POPの景色が変わったり、風通しが変わるような気配はあります?

トーフ:正直に言うと……ないです。

若林:そうなると、自分が居ても居なくても同じかあ、なんて気分にもなりません?

トーフ:でもそれは違うんですよ。僕がデビューしたときは『FANTASY CLUB』のようなものができるとは全く思ってなかったけど、4年でここまでいけた。だから今は他に僕のような人がいないけど、替えがきかないのであれば、居なきゃいけないし自分は居たいって思うんです。さっきの「昔の自分」っていうのがどう思うか。成長をベースに考えれば、今はなくてもやり続けなければ、それこそ「試合終了」になってしまいますから。

だから僕は成長を阻害するものが何よりも嫌いなんです。頑張ろうとしている人を邪魔するのは、世界で一番の悪だと思っています。その意味で、僕みたいなのがいることで50人でも100人でも頑張れる人がいるのであれば、やるべきだと思うんですね。それで僕の経済はまだ回っているので。

若林:それは使命感?

トーフ:難しいですね。これが使命感なのか、「使命感」という体(てい)で僕がやりたいだけなのか。ただ、「新しいこと」と「新しいっぽいこと」は全然違うじゃないですか。それが本当に新しいのかどうかは、自分が残っていくことでしか証明できないと僕は思うんです。

若林:昔、矢沢永吉さんにインタビューしたことがあって、彼はある時点からマネージメントもライツも、興行も全部自前で管理するようにしたんですね。結果、収入も増えたし、自由度も上がったりで、良いことずくめだったとおっしゃるんです。で、自分がそれを目に見える形で実現したら、後進の若手たちももっとそうやって続いてくるかと思ったら誰も後ろが続かなかった、扉を開けたのに誰もそこを通っていかなかった、それがとても残念だったと矢沢さんはおっしゃってたんですね。みんな意外と新しいことはやらないんだ、って。それは、かなりの「がっかり感」だったみたいです。

トーフ:変な言い方ですけれど、「ロック」とか「ヒップホップ」とか言っても、メジャーだと大概は結局事務所に所属するんですよね(笑)。でも、それは当たり前なわけで。そうしないとCDが出せないから。でも、一度でもインディペンデントでやってみようかなと考えたことがあるかは大事ですよね。

若林:逆に今のトーフくんは、メジャーアーティストとして振る舞わなければならない局面ってあるんですか?

トーフ:企業と仕事をしているときはもちろんそうですし、「飯食えてるよ」って感じは出さないといけないなあとは思ってます。以前神戸大学に講義に行ったんですよ。「国公立の大学に行っていると、就職しないことに抵抗が大きすぎる」、そういう人たちのためにこんな仕事でも飯を食えているということを話すんですね。なので、経済的に自立できることはめちゃめちゃ大事だとは思っています。

若林:自分は、これまであまりそういうことは考えてこなかったんだけれど、メディアの仕事っていうのはある種のファンタジーを売るという側面もあるので、金回りが良さそうに見えたほうがいいんじゃないかと最近思うようになったんです。ただ自分がやると無理矢理感があるんで、SmartNewsやNewsPicksの人とかに「きみら、ポルシェとか乗りなよ」とか言ってます(笑)。別にポルシェでなくていいんですけど、お金が動いてる感がないと、やっぱり若い人たちがこの業界に来てくれなくなっちゃうから。

トーフくんも以前、音楽業界にどれだけ貢献できるかが重要だと言ってたと思うんですけど、最近強く思うのは、自分が所属している業界の行方は、結局その業界の人自身が考えてくしかないってことです。他人は考えてはくれないわけし、そもそもその業界がなくても別に困らないわけだし。だから自分がいる業界に貢献したり、いい若者が入ってくるように努力したいし、時には見栄を張ったりすることも重要なのかなとか。


tofubeats / トーフビーツ -「BABY」