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「ポスト・トゥルース時代のトーフビーツ(仮)」──tofubeats × 若林恵 トークイベントレポート【後編】

Interview by Shusaku Hirota | Edit by Kazuya Kishimoto & Ryoh Hasegawa | Photos by Naomi Circus

2017.08.31[Thu]

本記事は、去る7月5日に行われたトークイベント「ポスト・トゥルース時代のトーフビーツ(仮)」のイベントレポートである。PCで楽曲制作を行い、インターネット上で楽曲を発表するスタイルで注目され、今やネット世代を代表するアーティストとなったtofubeats氏。(前作リリース時のCOTASインタビューはこちら)彼が今年5月にリリースした最新アルバム『FANTASY CLUB』において据えたテーマは意外にも「ポスト・トゥルース」だった。

リリースに際しての各媒体でのインタビューでは、彼自身が挙げる今作の創作のヒントの中には、ソランジュのアルバムなどと並び、WIRED日本版の若林恵編集長による文章が挙げられている。 「『ニーズ』に死を」と題され、2017年の年明けに発表されたこの文章では、アメリカ大統領選やマケドニアのフェイクニュースサイト、更に日本国内でのキュレーションメディアの炎上から、ポスト・トゥルース時代におけるメディアの状況が鮮やかに描かれている。

そして、その若林編集長により『FANTASY CLUB』のライナーノーツは執筆された。これはかねてよりイベントでの対談や紙面での特集などで、tofubeats氏と若林編集長とで交流があり、今回tofubeats氏直々に依頼したことで実現したという。

tofubeats氏はポスト・トゥルース時代に何を考え、今作に至ったのか? また、熱心な音楽リスナーとしても知られ、同時にtofubeatsファンでもある若林編集長は今作を聴いてどんな感想を抱いたのか? ポスト・トゥルース時代にクリエーターは、メディアはどのように振る舞っていくべきなのか? それぞれの視点から、COTAS編集長の廣田が迫る。(※イベントレポート前編はこちら

若林編集長にライナーノーツを依頼したワケ

廣田:ちなみに、今回のアルバムのライナーノーツを若林さんに依頼されたのはどういった経緯だったんですか?

トーフ:理由はシンプルです。若林さんは音楽ライターが行うインタビューよりも面白いインタビューをやっているし、音楽ライターが書く音楽のレビューより面白いレビューを書いているから。それが理由です。今回のWIREDの坂本龍一さんのインタビューも面白かったですし。

それこそさっき話していた「品」の問題もあるというか。音楽メディアって他のメディアに比べてWebが中心になってきていて、「ポスト・トゥルース度」が高くなっているんじゃないかって読んでいて感じるんですね。若林さんの仕事を見ていると、職業人としては当たり前かもしれませんが手抜きをしていると一切感じたことがなかったですし、プロ意識を前から感じていました。

廣田:若林さんは、依頼を受けたときは、どう感じられましたか?

若林:すごく難しいお題だなあと。そもそも第三者の視点からレビューを書くことと、パッケージのなかに入るライナーノーツを書くことって全く別の話ですから。とはいえ、商品にコミットしてほしいという依頼は信頼の証だと思うので、それは素直に嬉しかったですね。ただ、僕は基本的に「ライナーノーツは要らないだろ」って思っているタイプなんです。今自分が聴いている音楽について「この音楽はこうである」と言われても余計なお世話じゃないですか。だから、何を書くのか、単なるレビューを書いてもしょうがないし、トーフくんの人となりを書いても意味ないし、しかもテーマが「ポスト・トゥルース」という難しいお題なので、それをどう組み込むのか、とか検証しなきゃいけないコンテキストが多くて、正直かなり難しかったです。「これは俺にしかかけないな、やっぱ」(笑)と自尊心をくすぐられる一方で、下手なもの書けないという意味では相当緊張しました。

トーフ:あとは単純に異業種の人に書いてもらう方が、説得力が出るとも思いました。音楽ライターが書くと、どうしても褒める文章になりがちなので。僕は今回エッセイをアルバムのブックレットに載せていますが、手持ち無沙汰を防いで、聴きながら読めるものがライナーだと思っています。

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若林:本来、アーティストは作品ごとに「今回はこういうことを考えて作った」というふうに行き先を決断して、スタイルを思い切って変えたりもしますよね。海外のアーティストの場合は、特にそれがストレートに作品に出るし、出来の良し悪しはさておき、そうした思い切りを評価するような土壌もあると思います。古い話で恐縮ですけど、昔、Beck(※5)が『Sea Change』というアルバムを出したとき、「あぁ、ベックは、こういう景色のなかに進んでいくんだ……」という感動があったんですよね。アーティストの成長をリアルタイムで体験するというか。日本のアーティストでは、なかなかそういう感慨が湧くことってないんですけど、今回の『FANTASY CLUB』は、そういう感慨、成長と言って偉そうだったら、進化を目の当たりにする感じが、それこそ泣けてくるほどありました。この作品についてPitchfork(※6)のレビューには「アーティストtofubeatsが初めて作品を作ったアルバムである」と書かれていて、これはまさに自分の印象とも合致していました。だからこそトーフくんは次は何をやるんだろうと思うし、どう成長するかを一緒に同時代にみられることは楽しいですね。

トーフ:自分でもそう思います。音楽を作ると、その時々で自分自身のことがどんどん分かっていくんですよ。曲を作ると、自分が思っていることや自分が人にどう見られたいのかに気づく。あとはアルバムを作った後に、若林さんが書いたライナーノーツを読んだり、こうしてお話をすると、自分が思っていなかった自分がどんどん分かっていくといいますか。それが一番面白いですね。


※5:Beck(ベック)…オルタナティブ・ロックを代表するアメリカのソロアーティスト。90年代から第一線で活躍し、ブルースやカントリー、フォークなどの要素を取り入れた音楽性で知られる。

※6:Pitchfork(ピッチフォーク)…アメリカの音楽Webメディア。レビューを主なコンテンツとして急成長し、2000年代以降特に影響力を増した。インディー系アーティストの発掘、紹介に定評がある。2015年には「WIRED」「Vogue」「GQ」などを刊行するコンデナスト社に買収された。