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「ポスト・トゥルース時代のトーフビーツ(仮)」──tofubeats × 若林恵 トークイベントレポート【前編】

お金に換算できない価値を信じる人と、信じない人の乖離

トーフ:さっきのジュースの話ですが、これは逆に言う「本当に美味しいものが残らない」と言う話でもありますよね。作った人は「これはすごい。うちのショップの歴史が変わるぞ」と思って作っていて、実際に僕が飲めば「超おいしい」と感じるかもしれませんよね。ただ、ここにいる皆さんが「不味い」といえば、おいしいと思っている人を置き去りにして、そのジュースは市場原理によって無くなってしまうわけです。これってまさにインターネットにも当てはまりますよね。たとえば、フリーソフトでも「あんなに良かったのに、なぜ提供を止めてしまったんだ。なぜ、続かないんだ」と思うことがあるじゃないですか。

僕の活動に関していえば、僕が売り方にも関与して、すべて僕の思った通りに店頭で売られていると思っている人もいると思うんですよ。でも売り方までは自分では関与してないし、そこは一緒にしたくないんです。マーケティングや売り方の部分をアウトソーシングするためにワーナーミュージック・ジャパンと契約しているんですね。だから矛盾も感じるんですよ。マーケティングが侵食してきた割に、そことクリエイティビティを一緒にしちゃうのかという。

廣田:もともとインターネットは、ピアトゥーピア(P2P)に強いというか、少数の人たちにレアなものがちゃんと届く仕組みだったわけですよね。むしろ、ビジネスにならないけど、大事なものを守るためにネットがあったというイメージです。しかし、それがいつしか数の論理や経済の論理と結びつくようになってしまったということですよね。結局、多くの人が見るようなもの、例えば、猫の動画とかポルノ動画のようなものしかPVは稼げないわけです。でもそれがアクセス数のみを評価するKPIの世界では、正義とされる世界がある。「ビジョン」や「数字にならない質」を問えない仕組みがどんどん成立して、広告会社もその仕組みの部品の一部になり下がっていってしまっている気がするんです。

これはトーフさんにもお聞きしたいことですが、いまは純粋に音楽が好きだとか、エンタメ業界に入りたいだとか、そうした感覚をまともに持ったり、議論することすら難しくなってきていますよね。

トーフ:曲を作っていたり、バンドをやっている若い子に「どうすれば売れますか」と質問されるのが一番悲しいんですよ。僕は音楽を作るのは自分の喜びのためにあると思っているので。それを皆さんに聴いてもらって、なおかつそれで暮らせるなら、それほどラッキーなことはないというだけの話で。目に見えないからこそ「ネットやマーケティングと結びついている」と言われますが、やっぱりモノがあってこそじゃないですか。

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たしかに経済の世界ではキャッシングしてレバレッジをかけることが経済合理性の観点では良いことなのかもしれない。でもそれをアートの世界でやっていいのか?ってことなんですよ。儲かる以外の部分を創出していく感覚が自分のなかにはあるんです。ただ、こういう時代なので、そうした感覚を持っていないこと自体は責められないなと思って。自分の感覚を押し付けたいというのではなく、「どう思いますか」と問いたくて今回のアルバムを作りました。

若林:さっき話したインタビューでもトーフくんはお金に換算できない価値を信じている人と、信じていない人の乖離がどんどん広がっているといってて、これは本当にそうだと思うんですよ。

トーフ:アートや文章が好きだって言う人は、お金に換算できない価値があると思っていなければできないと思うんですよ。ただ、同時に「いや、でも、そんな想いなんてなくても、できてしまうのかもしれない」といった不安も一方でありますけどね。

廣田:「ニーズ×AI」で意外に売れるものが出てくる可能性はありますよね。AIとビッグデータを掛け合わせて、「絶対に売れる曲方程式」みたいな。AIにヒット曲を学習させて、ヒットの確率を弾き出すといったサービスなんかは、もう世に出てきてますよね。

トーフ:今喋ってるようなことも取り込まれていく可能性もありますしね。ただ、いちクリエイターとして、「これオシャレなのか?」とかみんながどう思っているのかは気になりますね。その点、こうしたテーマを健全に考えられる場所として自分が神戸に住んでいるのって便利なんですよ。なのでこれは地方の問題とも繋がっているというか。神戸にいるとき、なんとなく周りの人に同調して褒め合う必要がないのはものすごく助かるんです。


tofubeats – CALLIN

「売る」と「つくる」、目的の順序を間違えないこと

若林:セールスについて、トーフくんは以前どこかのインタビューで「これまで出した2枚のアルバムは、売れるか売れないかを結構気にしていた」と言ってたと思うんですけど、そのあたりの意識は今回のアルバムでどう変わりました?

トーフ:メジャーデビューすると契約金を含めてある程度のお金をもらえるんですよ。そのときに「CDが売れないと、このお金は会社にとって損になるのか」とはもちろん思いましたし、やるからには売れないと面白くないとも思っていたんですよ。今でも売れたいとは思いますけどね。先日も地元神戸のショッピングモールの短冊に「FANTASY CLUBが5万枚売れますように」って書いてるので(笑)

ただ、デビュー当時は「売れないといけない」という意識が強くて、いいものを作ろうという意識と、順番が逆になりかけていたかもしれません。周りが「頑張って売るぞ」となっているのをみると、「俺も頑張って売ろう」と、どうしてもなってしまって。周りを気にしていたのかもしれないですね。

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若林:「5万枚」という具体的な数字が出ましたけど、自分の音楽を聴いてくれる人の最大数ってどのくらいいると思います? ちなみに僕が編集者として関わった単行本って、大体15,000部を超えたことないんですよ(笑)。威張ることでもないし、別にそれでいいとも思ってないんですが、20年以上この仕事やってきて改めて思うのは、自分には20万〜30万部と売れるような本の作り方ってさっぱりわからないってことなんです。なぜかといえば、そもそも自分自身が、数十万部売れるような本を読んだこともないし、興味ももったことないんですよね。興味もないから研究もしないし(笑)。って、志が低いって言われりゃそうなんですが(笑)。

トーフ:……ビックリしましたが、実は僕も同規模ですね。ただ不思議なもので、音楽に関しては「これが?」と思うものが100万枚を超えたりするので。ただ、1万枚って単純計算でひとつの大学の規模ですよね。そう考えたら嬉しいんですけど。でも神戸市の人口が約150万人ということを考えると、まだいけるような気もするしそれが天井のような気もするし。ただ、言えるのは「今よりいけると思っていないと、頑張れない」というのはありますよね。

若林:雑誌やってて、もっと売れて欲しいとは常に思ってるし、毎号校了するたびに「これは売れるぞ!」って期待するんですけど、売れないんですよ、これが(笑)。あるいは数字を取りに行ってやった「お金」の特集よりも、売れ行きを度外視してつくった「死」の特集の方が数字が良かったりとか(笑)。

トーフ:順番だけなんですよね。「良いものができたぞ」と思ってそれが売れるなら良い。たとえ100万枚売れたとしても、「これで?」と自分が思うようなものだと売れても嬉しくないから。例えば、まだ人気がなかったときに「大きいクラブでプレイできますよ」と声をかけてくれる人がいたんですけど、そこに実力が伴っていなければ大きい会場でプレイしても嬉しくないじゃないですか。これはさっきから話している「お金とお金じゃないもの」の話にも繋がる話で、これを勘違いしている人が多い気がします。

「いいね!」をたくさんもらうことが嬉しいのではなくて、自分が作ったものの対価に「いいね!」がもらえているのが嬉しいわけで。「いいね!」がもらえるなら自分が全裸で海岸を走り回っている動画でもいいのかと。ここが入れ替わってしまうのはどうかと思いますね。面白い場合もありますけど。大概、品がないなと思うんですよ。


tofubeats – WHAT YOU GOT (視聴動画)
(後編はこちら



■関連情報
tofubeatsオフィシャルサイト

  • tofubeats(とーふびーつ)
  • トラックメイカー / DJ
  • 1990年生まれ、神戸在住。トラックメイカー / DJ。 2013 年 4 月にスマッシュヒットした「水星 feat. オ ノマトペ大臣」を収録したアルバム「lost decade」 を自主制作にて発売。同年秋には「Don't Stop The Music」でメジャーデビュー。以降、「First Album「POSITIVE」と 2 枚のアルバムやリミックス・アルバム、EP 各種をリリース。2017 年 2 月には 約 1 年半ぶりとなる新曲「SHOPPINGMALL」、続 く3 月に新曲「BABY」を連続配信リリース。 2017 年 5 月 24 日にメジャー通算 3 枚目となるアルバム「FANTASY CLUB」をリリース。
  • SHUSAKU HIROTA
  • Communication Designer / / dentsu
  • 放送局勤務を経て2009年に電通入社。企業のデジタル戦略的活用のお手伝いをしています。社内横断組織「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」ディレクター。著書に『SHARED VISION』(宣伝会議)がある。趣味は、読書と座禅。