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表現と生活の区別がなくなったらおもしろい。スマートフットウェア「Orphe」制作者の見る未来

IoTやウェアラブルデバイスの製品が世にでるようになって数年。いかにスマートで便利な毎日の生活を送ることができるか、そんな未来の暮らしを描こうとさまざまな企業が新しい製品の開発に力を注いでいる。

そんな中、日本のスタートアップが新しいスマートフットウェアを発表した。株式会社 no new folk studio(以下nnf)がつくるスマートフットウェア「Orphe」。スニーカーのソールに仕込まれたLEDの光を履き手の動きにあわせてコントロールし、外部のスピーカーから音を奏でることができる。2015年にアメリカのクラウドファウンディングサイトIndigogoで出資をつのるプロジェクトを立ち上げた結果、目標の3倍以上である11万ドルを集めることに成功。その後2016年には「AKB48」の公演への提供や、サンフランシスコで開催されたイベント「J POP SUMMIT」では「水曜日のカンパネラ」とのコラボを行い、9月からは伊勢丹や阪急、蔦屋家電といった一般販売店での発売が開始した。

nnf を立ち上げ、Orpheを企画・開発・製造したCEOである菊川裕也さんに、Orpheそのものについてや、さらにIoT・ウェアラブルデバイスのもつ可能性や将来像について伺った。

Interview by Yuki Shintani | Photos by Naomi Circus

2016.10.14[Fri]

ユーザー自身でコンテンツを増やしたり交換できたりするので、無限に光り方が生まれると思います。

— Orphe、僕もindiegogoで出資してたんですが先日届きましたよ。Orpheそのものに関する記事は色々なところで取材されているとは思いますが、改めて。製品について説明していただけますか。

菊川:Orpheはまず第一には綺麗に光る靴です。靴自体の見た目のデザインや実制作においても、インタラクションなど抜きにしてまずは綺麗に光ってかっこいい靴に仕上げることを最低ラインにおきました。次に、足の動きにあわせて光り方が変わります。スマホアプリで光り方をアレンジもできます。

— なるほど、パソコンがなくてもスマホがあれば光り方をカスタマイズできるんですね。

菊川:そうですね。スマホアプリは無料です。スマホアプリだけでもかなり色々なことができますよ。光と音の組み合わせをシーンと呼んでいるのですが、各シーンを選択すると光が変わります。たとえば「Water」のシーンは水のような光。この靴自体はスピーカーを内蔵していませんが、スマホ側からは連動して水の音が出ます。シーンは簡単に編集できて、設定次第で光を赤にしたり光のアニメーションを変えたりできる。また、9軸センサーが靴に内蔵されていてジェスチャーが判別できます。例えばつま先で床をタップしたときの色と、足の裏でステップを踏んだときの光をそれぞれ設定したり。

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— つま先と踵を別々で光らせたりもできたり?つま先をトントンってタップしたときはつま先だけ光るみたいな。

菊川:それ、やりたいですね!まだ実装していませんが。理屈的には角度のセンサーが入っているのでソフトウェアを追加開発すればできます。

スマホアプリだけでなくPC向けにユーザー自身で開発してカスタマイズも可能にしています。PC向けのソフトはハブアプリという名前で、Orpheと別のソフトをつなぐことができます。このソフト単体では9軸センサーの各値を見ることができます。ここにOSC(※1)を使って他のソフトをつなぎます。

— DJソフトをOSCでつないでOrpheと連携させたり、ってことですね。

菊川:そういうことです。Orpheから外部ソフトに入力することもできますし、外部ソフトからOrpheに出力することもできます。例えばMAX(※2)と連携させれば、つま先の傾け方に合わせて出力する音の高さを変える、といったようなできるようになります。足を上げると高い音、下げると低い音が鳴る、とかですね。自分でプログラムを組んでもらえれば自分専用の楽器が作れるわけです。

— 僕は自分でDJもやるのですが、クラブでこれ履くと目立つだろうな、と思ってました。といってもDJブースにいると靴が見えないのでフロアで使うことになると思いますが(笑)。過去作品のPocoPoco(※3)も、Ableton Live(※4)のコントローラー(※5)に別のパラメーターがついてる、という感じを受けたんですよね。きっと音楽好きなんだろうな、と思いました。

菊川:そうですね(笑)。もちろん連携させるソフトはMAXに限らないですし、アイデア次第でいろいろなことができます。さらに将来的にはデータを交換できるプラットフォームも作る予定です。ユーザー自身でコンテンツを増やしたり交換できたりするので、無限に光り方が生まれると思います。

どうしても光る靴と呼ばれるので、音に着目されると嬉しいですね。

— たとえば楽器以外の用途だと、どんな使い方がありそうでしょうか?

菊川:9軸センサーの値を1秒に50回ログを取っていて、それが使えると思います。たとえばスポーツの解析ですとか、ダンスのときに足がどんな動きをしていたか、などを記録・再生ができます。とはいえ、わざわざ光る靴でやる必要があるか、とは思いますし、発展させ方としてはメインいうよりもオプション的ではあります。わかりやすい使い方だと、ダンサーがクルクル回ったり激しく動いたりして光るのが1番ですね。

— フィギュアスケートとか、足をすごく使うスポーツとかで使うと面白いでしょうね。超人スポーツ(※6)というのが最近あるのですが、ゲームのルールの中にOrpheでとれるデータも加味したらまた新しいスポーツが生まれたりしそう。Orpheポイントみたいな(笑)。

菊川:フィギュアスケートだと運動のビジュアライゼーションとしても良さそうですね。

— フェンシングの軌跡をビジュアライズする、というのがありますよね。あとはバスケとかサッカーとか、足ヒレにしてダイビングで使うとか(笑)。シンクロナイズドスイミング、までいくと靴下くらいに軽量化が必要になっちゃいますが。

菊川:海の中で光ったら楽しそうですね。海で使われるのも見たくなってきました。

— なるほど。やっぱりどちらかというとユーティリティというよりはアート寄りなイメージですね。

菊川:それこそDJのときに組み合わせて使ってみてください。むしろDJと組み合わせて使うときの機能について一緒に考えてほしいです(笑)。

— いま鳴ってる音に対してエフェクトや別の音を重ねがけできたら楽しそう。体を使ったインタラクションといえば以前はKinectがよく使われていましたが、身体性が全然違うと思うんです。Orpheの方が直感的で操作感が高い。

菊川:音に着目されると嬉しいですね。どうしても光る靴と呼ばれるので。それでいうとダンサーが楽器になる、っていうのも面白いですね。

— 確かに、ビジュアル面でのコントロールの方が文字通り見た目だけ考えると分かりやすいとは思いますね(笑)。トレーラームービーではダンスパフォーマンスに使っていましたよね。VJと連携するのも良さそう。

菊川:Orpheからの情報をVJに反映させることもできます。これは21世紀美術館を舞台にして収録した映像です。このときの企画はアートの流れの中でOrpheを見ていただいていますね。ダンサーの動きがどう拡張しているかを映像に反映しています。

— VJ以外のビジュアル面での活用だと、照明がみんなのテンションに合わせて変わるとかもおもしろそう。ナードといいますか、インターネットカルチャー側の人たちが集まるクラブイベントって、みんな下向いてスマホ触ってるんですよ。「めちゃ盛り上がってる!」ってtwitterにイベントのハッシュタグをつけてつぶやいてる。確かに盛り上がってるんですが、重要なのはそこじゃなくて、ハッシュタグをつけて同じ場にいる人と気持ちを共有する、要するにその「場」に参加したいってことなんだろうな、と。同じことを僕もよくやりますし、そういうカルチャー自体それはそれで好きなんですが、文字情報以外でも気分を共有できないかな、と思うこともあって。

菊川:わかります(笑)。Orpheではないですが、以前イベントで、twitterでハッシュタグをつけてつぶやいたらきゅんくん(※7)の服がその色に光って、それが砲撃になって敵にダメージを与えて倒す、というのをイベントでやりましたよ。


※1:OSC…open sound controlの略。電子楽器やコンピューターの間で、演奏データをリアルタイムに通信するためのプロトコル。OrpheとコンピューターをOSCでつなぐことで、Orpheを楽器として使いコンピューターの中の音をコントロール・演奏することができる。

※2:MAX… Cycling ’74社によって開発・発売されているビジュアルプログラミング言語。直感的なインターフェースと拡張性が評価されており、音楽やメディアアートの領域で広く用いられている。

※3:PocoPoco…菊川さんが首都大学東京 馬場哲明准教授(当時は助教)の研究室に所属していたときに同じ研究室のメンバーとつくった電子楽器。「押す」「つかむ」「回す」といったシンプルな操作で簡単に音楽を演奏することができる。

※4:Ableton Live…ドイツのAbleton社による音楽制作と演奏のためのソフトウェア。ライヴパフォーマンスや作曲・編曲のツールとして、楽器と同じように使用することを考え設計されているのが特徴。

※5:Ableton Liveのコントローラー…多数のパッドボタンとノブの組み合わせでAbleton Liveをコントロール・演奏しやすく設計されている。Ableton PushやAKAI APC40などが代表的。

※6:超人スポーツ…技術と人間の身体を融合させた新しいスポーツ。VR技術などを応用して人の身体能力を超える力を身につけさせたり、あえてハンディーキャップとなる器具を装着することで年齢や障がいなどの身体差を超えて誰でも参加できるようにしたスポーツ。

※7:きゅんくん…ウェアラブルロボット、ロボティクスファッションクリエイター。ファッションとして着用するロボットの制作を行う。Orpheの過去のオフィシャルムービーにも出演している。

(次ページ 現状のウェアラブル、IoTの課題)