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予算はなくても愛がある。『アイキャラ』プロデューサーの野望【後編】

番組の放送回数を重ねるごとにキャラクター作りが進行するアイキャラ。
MC陣やまきこまれ先生が、公募作品やSNSで視聴者とコミュニケーションを取ることも大きな特徴。台本にはない視聴者の反応がキャラクターの行方を大きく左右するリアルタイム性も魅力のひとつだ。

視聴率よりもファンにいかにして求められるか、そして楽しんで貰えるかを優先して番組作りを行ってきた結果、インタラクティブでオープンな雰囲気が形作られていった。同時に、毎週の進捗が自然と楽しみになる仕掛けが出来上がっていく。

じわじわとファンを獲得しつつ広がっていったアイキャラは、これからどこへ向かおうとしているのか。前半に引き続き、番組の舞台裏に迫る。

Interview by chamooi | Edit by Ryoh Hasegawa | Photos by Naomi Circus

2017.07.28[Fri]

最小限のスタッフ、機動力を持って番組を作る

ーー番組を観る度に、スタッフさんが急ピッチで作業を進められている光景が浮かびます。こうした面での苦労はありましたか?

前田:正直、潤沢な予算があるわけではないので、何からなにまで環境を整えてあげられるわけではありません。巻き込まれた方々にとっては「いい加減にしろ」という感じかもしれませんが、最終的に楽しくお仕事をさせてもらっていることは冥利に尽きるという想いです。

地上波をきっかけにしているからこそ得られる視聴者のリアクションもあるので、抜けがすごくカラッとしていて痛快。なので仕事が大変でも、最終的には「しょうがないな」と思ってもらえているようです。そもそもスタッフも「仕事として」という感覚でスタートしていないので、その意味ではうまくいっているのではないかと思います。

たとえば、収録もライブ感覚なんです。台本も細かくないので、MCの方々にお任せしている部分が大きい。収録中に出てきた新しいアイデアが技術的にも金銭的にも実現不可能な場合は、僕らは裏でバツ印を出して、それを受けたバカリズムさんに軌道修正しながら進めていただいています(笑)同様にして、その場でいけそうな面白いアイデアが出てきたら、積極的に実現に向けて一気に動くようにすることは心がけていますね。

「アイキャラ」は僕が今まで担当してきた番組のなかでも、最小のスタッフ人数でやっています。テレビ番組のエンドロールをご覧になっていただければ分かりますが、出てくる人間の数は普通数倍のはず。その分、フットワークが軽い。役割分担もしっかりしているので、新しいアイデアが出てきたときは、全員でその場その場でGOサインを出して、収録後すぐに会議室に集まる。2週間後に控える次の収録に向けて動き始めたこともよくあります。時間が必要な場合は、番組の予定されているロードマップを組み替えたりなど、収録を終える度に決めています。さながらジェットコースターのようです。

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「ボトムアップ」の過程で”勝ち馬”の匂いを漂わせたい

ーー前田さんは「アイキャラ」以外にもいくつか担当を持っていらっしゃいますよね?

前田:他には「バズリズム」と「チカラウタ」をやっています。それから半年に一度、夏には「THE MUSIC DAY」という10時間超の音楽番組を、冬には「ベストアーティスト」を準備したり、すべて同時進行でやっています。先ほどもお話したように、「アイキャラ」は少数精鋭なので、持ち場をきちんとこなすためにも結構せわしなく動いています。

ーー「アイキャラ」に携わっているスタッフの方々の熱意はどこから来ているのでしょうか?もともと皆さんが好きな領域だったのでしょうか?

前田:そうですね。その意味で、結果的に最小人数になった側面もあります。日テレの社員は僕だけで、あとはすべて外部の制作会社やテレビの仕事をやっていない方が関わっていたりします。

ーー日テレでは前田さんだけなんですね!ではやっぱり日テレのなかでは”異端児”のような存在なんでしょうか?(笑)

前田:ゲリラだと思います(笑)たとえばアニメの部署も「アイキャラ」にはあまり関わってなかったのですが、これからブーストを仕掛けていくタイミングになれば力を貸してもらうようなこともあるかもしれません。

それは、もともと排除されていたわけではないんですよね。よくも悪くも社内からはあまり気にされてなかったんです(笑)。そういう番組を最初から求められていたわけではなかったし、スタートの段階は本当にゼロだったので。

ーー深夜の番組はそういった「スモール・スタート」のパターンが多いのでしょうか?

前田:深夜は基本そうだとは思うのですが、「アイキャラ」は深夜中の深夜というか、僕のプロデューサー人生のなかでも史上最低額の予算で始まってます。なのでいろんな意味でミニマムな番組なんです。だからこそ早くボトムアップをしていく過程で、「勝ち馬」の匂いを漂わせたいなとは思っています。

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MCは「バカリズム」しか思い浮かばなかった

ーー具体的にどこまでいけば「勝ち馬」と前田さんは考えているのでしょうか?

前田:どこまでというのは想定していないですが。個人的にはアニメ化作品は普通に観たいです。あとは元々ピュアな想いで仕掛けたものだとしても、ビジネスとして勝てればいいなとは思います。それが「夢」が続くことでもあるので。とはいえそこを目的に据え置いているわけではなく、あくまでもワクワクしてほしいという気持ちは変わりません。たくさんの人に知ってもらいたいという強い気持ちがあるからこそ、もう一度シーズン3を地上波に乗せて、大きいことを仕掛けたいんです。ひょっとしたらアイキャラFesでイベントに参加した800人しかついてきてくれないかもしれないですが、うまくいくと武道館を埋められる万単位まで広がる自信も持っています。

ーー「アイキャラ」MCの三人(バカリズム、Base Ball Bear・小出祐介・でんぱ組.inc・夢眠ねむ)も、一見集まらなさそうな三人を見事にピックアップされていますよね。

前田:6年前に出した素案のときから、僕のなかではMCはバカリズムさんでした。6年を経て改めて考えたときに、やっぱりバカリズムさんにお願いしたかった。あの方がダメだったとしたら…ほかの人は正直思い浮かばなかったですね。

ありがたいことに仕事を引き受けてくださって、そこから定期的にバカリズムさんと打ち合わせていきました。一人でやりたいかあるいは複数でやりたいか、そういうところまで話していったんです。いろいろな意見が出たのですが結果的には、バカリズムさんがもともと親交のあった小出さんや夢眠ねむちゃんがいいかもということになり、それぞれにお願いしました。それで蓋を開けてみたらバッチリハマってくれたんです。

1回目の収録から驚きっぱなしでした。三人のMCが出してくるアイデアも、想像をはるかに上回ってきたんです。出演してもらっている以上、こちらも手を抜くわけにはいきませんし、我々が投げていくボールはいつも真剣勝負です。もちろんその向こう側にいる視聴者さんたちが最終目標なのは変わりませんが、その手前にいるMCさんたちにも驚いてほしいと思ってやっています。

ーーその形でやっているからこそ、MCの方々の驚きや興奮がそのままダイレクトに視聴者に届くのではないかと感じています。

前田:おっしゃるとおりでお三方もまた視聴者のことを考えていて、オンエアをリアルタイムで観てくれているんです。お三方が番組についてツイートをして、「バカリその通り!」、「ねむちゃん神かよ!」、「そこでそうきたか小出さん!」というように視聴者からそこにさらなる共感が生まれているんです。お三方がまず楽しんでいて、ユーザーとすごくマッチしているのは本当に幸せなことで、楽しくやらせていただいていますね。

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視聴率ではなく、熱量を持ったファンに継続的に届け続ける

ーー好きなことを仕事にするために、プロデュースする力やコツはどのように鍛えられているんでしょうか?

前田:どちらかというと僕は不器用なので(笑)。運と縁としか言いようがないですね。

正直いうとテレビマンとして成功したいなら、視聴率を取りづらい音楽番組をやってはいけないはずです(笑)それでも僕は愚直に好きなことをやってきました。もちろん音楽番組も仕事ではあるのですが、どうしても100%仕事としては捉えられないんです。

僕は昔から音楽番組をずっと担当してましたが、VAPに出向するときには、いろいろと疲れてしまい音楽が嫌いになってました。それでも出向していろいろな仕事を担当するうちに一度リセットされ、もう一度好きになってから日テレに戻ってこれたんです。好きなバンドのライブを観るために、休日にはライブハウスにまた通うようになりました。

当たり前ですがテレビのキー局は音楽の会社ではなく、あくまで音楽はテレビの会社のなかのひとつのフィールドに過ぎません。音楽のフィールドでやっていくやり方はたくさんありますが、どのやり方を取ったとしても、ライブハウスに通うという選択肢はあまりないらしいんです。偉そうにするつもりは毛頭ないですが、キー局のプロデューサーが週末にライブハウスで2時間立ちっぱなしで演奏を聴くということはあまりない光景だと聞きます。

僕はただ好きだから通っていますが、その積み重ねによって対外的にも自分のキャラクターが勝手に立ち上がってくるんです。たとえば自分の目利きで担当していたアーティストが売れてくると、それがまったく違ったところで活かされていきます。これはサラリーマンとしてはリスキーな生き方だとは思うのですが、どこかで繋がる瞬間が突然来たりするんです。

おそらく「アイキャラ」もそうしたやり方の延長線上にあるのではないかと思います。「アイキャラ」はお仕事として作ったものでは全くなく、心底やりたいと思って素案から作ってきたものです。僕は日テレ社員の一人ですが、だからこそ細かいことでも這いつくばれてしまう気はしますね。

ーーかつての深夜番組であれば格上げされてゴールデン番組になるということが、ブーストを仕掛けた先にあったものだったように思います。ただ、「アイキャラ」はそこを目指しているわけではないということが今日のお話から感じられました。

前田:すでに述べたように、もともと視聴率だけを求められない「日テレ☆ミライ枠」から始まった番組が「アイキャラ」です。初回の視聴率は2.9%だったのですが、偉い人から「そんなに取らなくてもいいのに」と言われるくらいのポジションだった。つまり2%を3%に乗せしていこうというテレビ的な考え方ではなく、視聴してくれている2%の激熱なファンに継続して観てもらうようにしようという作り方が僕らは許されていたというわけです。僕が担当している「バズリズム」では当てはめられない思考回路が、「アイキャラ」においては許されていたという言い方もできるかもしれません。そのため、この番組については毎回同じ40万人が毎回同じ熱量で観てくれている状態が理想なのです。視聴率としては大したことがないとしても、違う捉え方の世界で、きちんと成立している。それが僕が持つ究極のイメージです。

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「テレビを作るのは人」プロデューサーとしての番組制作哲学

ーー最後に番組づくりで大切にしていることをお教えください。

前田:二つありますが、一つはあくまでもお客さんありきのもので、純粋にお客さんがワクワクしているところがみたいということが変わらず持ち続けてきた気持ちです。

それからもう一つ僕はプロデューサーなので、費用対効果を念頭に置かなければいけません。限られた予算のなかでチームにどうお金を配分するのかということはいつも考えています。その考え方には二通りあります。一つはとっても辛い仕事なんだけど、ギャランティが良くて納得できるパターン。もう一つは、報酬は低いんだけど、割りがいい、もしくは仕事への「思い」がそれを上回るパターン。ギャラ安い、辛い、は最悪のパターンです。

番組もあくまでも人が作るものなので、プロデューサーとしてはいかに良い雰囲気をチームに作り出すのかということを考えます。予算を削減するために「弁当をカットします」といった番組があるかもしれませんが、僕は個人的にはそれはいけないと思っています。とある映画プロデューサーが言っていたことですが、彼は予算を見積もるときに、まずはケータリングの予算から取るといいます。つまり、人を動かすために胃袋から掴んでしまおうというのです。そこが疎かになってしまうと、働いている人たちの精神も荒んでしまう。あくまでもチームでやっていることなので、意外とそうした部分がすごく大事です。

もう一つ視聴率を上げようという思考回路で番組を作っていると、当たり前ですがエンドロールは短くまとめられがち。僕はそれがすごくイヤで、なるべくならみんなをきちんと載せてあげたい。この発想はテレビマンとしては逆行しているかもしれませんが、番組はやはり想いの総体でできているものです。「テレビを作るのは人」という考えは、どうしても捨てきれません。

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  • 前田 直敬(まえだ・なおたか)
  • 日本テレビプロデューサー
  • 1974年富山県高岡市生まれ。
    慶應義塾大学卒業後1998年日本テレビ放送網(株)入社。
    制作に配属後、「THE  夜もヒッパレ」「LIVE MONSTER」「ベストアーティスト」「THE MUSIC DAY」など音楽番組を主に担当。2006年から3年半、グループ会社のVAPに出向。A&Rを担当した経歴も持つ。2016年、2次元キャラクターを育成する番組「アイキャラ」を企画プロデュース。自身のスキルを生かしながら、無の状態から音楽、映像、イベント、配信、マーチャンダイズへボトムアップ展開する異色の試みを続けている。
  • chamooi
  • Illustrator / /
  • ポップでフレッシュな作風が目印のイラストレーター。
    アーティストビジュアルからキャラクターデザインまで、幅広い領域を手掛ける。