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そもそもメディアは誰のものなのか?編集者が担うものに必要なこと【後編】

文体が持つ価値とは?

若林:そうやって考えると、消費情報がゼロのメディアだって、きちんと価値を持たせうるんです。今の日本人の大問題だと思うのですが、イベントとかでよく、「情報ってどう探していますか?」と聞かれるんです。それは基本的には、 自分は情報をとれていないと思ってるから、そんなことをぼくに聞いてしまうんだと思う。でも、きっとそんなはずはなくて、絶対、みんな情報はとれているんですよ。だってそこら中に情報は溢れているから。でもそれが消費と結びつかない限り、その情報の出口が持てなくなってしまって、自分の中で滞留してしまう。 出先がなくなってしまっているんです。「買う」以外の選択肢が思い浮かばなくなっている。

いま『WIRED』では、ウェブサイトを、文体ごとにカテゴリを分けようと考えています。ウェブを、ニュース、ストーリー、インサイト(論考)の三つの「形式」に分けようとしています。そしてそれぞれを、 どういう位相に位置付けられるかを考えてみると、あくまでも仮説ですが、ニュースが束になったものをストーリーと考え、ストーリーが束になったものから論考が生まれるというふうに説明できるんじゃないか、と思っています。つまり、それぞれを、階層化された価値として設定できるんじゃないかと思っているんです。そうやって、情報の価値のレイヤーを整理して、順繰りに、思考が次のステップにあがっていくような価値設定ができれば、情報が行き場を失わず、どのレベルの情報なのかがわかるので、読者の中で滞留しないと思うのです。

で、論考を経て、読者が「じゃあどうしよう?」となったとき、その先は社会に還元しよう、という風に促せるんじゃないかと思うんですね。自分なりの意見を述べるなり、何かアクションをするなり、読者がこの情報から得たものを、ただ消費行動につなげるのではなくて、何か社会に還元する行為をしてもらおうと。単純に情報を消費して終わりではなく、ある情報の背後にあるストーリーを踏まえ、きちんとした論考を受け取った後、「さあ、自分に何ができるだろう」と考えられるように持っていく。

ニュースというのは偏在しているので、それ自体はなかなかこの時世、価値を生みません。でもそれがストーリーになって、ストーリーがインサイト(論考)になっていくとき、そこには物理的な活動も発生しますし、非常に負荷の重い思考の努力もいります。そこに価値があるんです。ニュースがタダ、は仕方のない趨勢です。けれども、ストーリーやインサイトにはちゃんとした対価が支払われるべきですし、そこはゆくゆくは課金の対象とできるのではないか、と思っています。文章の形式に従って、かかっている労力やコストが変わってきます。そこをちゃんと明示化しないといけないんだろうと思うんです。

廣田:ツイッターみたいな情報と、読むに堪えうるブログの情報は違うと。

若林:読むに耐えうるストーリーやインサイトには、努力と才能と経験がいりますからね。なぜ、みながそれを簡単にできると思っているのか、ぼくには謎です。何かを取材して1万字のストーリーにまとめてください、といってできる人なんてほとんどいないんですけどね。メールやブログを書けることと、商品としてそれをつくるということにはものすごい開きがあります。もっとも、それはプロしかできない、という話ではなく、プロでない人のなかにもそれができる人もいて、その意味では誰にでもチャンスはあります。ただ、チャンスはあるけれど、片手間にできるほど楽ではない、ということです。コミットメントは必要。どんな仕事だってそうですよね。

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メディアは誰をマーケットにするか?

若林:メディアの話でぼくが最近よくするのは、ぼくらが相手にしているマーケットは3つあるということです。読者 、広告クライアント、そして もう一つは、サプライチェーンです。読者と広告クライアントについては、みなさんが散々お話してることなんですが、意外と言われないのはサプライチェーンの話なんです。要は「仕入れ」です。ここをいかに強固にするかが、メディアにとっては、とても重要なんです。

雑誌に限らず、ものをつくる基本は、まずはどうしたって「仕入れ」じゃないですか。ネタって言うわけですが、どうやっていいネタを仕入れるかは、何にしたって生命線なわけです。雑誌で言うと、それは「一緒になにかやりたい!」って思ってくれる、よりよいライターや外部編集者、イラストレーター、写真家、あるいは「こういう情報興味ありませんか?」っていう情報提供者にあたるんですが、そういった人たちをいかに集めて、どう編成するかっていうのは、とても重要です。 仕入先のことを考えないと、寿司屋をはじめられないというのと同じです。そして、仕入れられるものの種類によって、読者は決定的に変わってきます。

フィジカルの雑誌で言うと、読者とのインターフェースってオンライン、オフラインの書店にあたるわけですが、じつは、そこは編集スタッフは関与できない空間で、そこは販売部という部署が取次さんとともに管理しているんです。で、広告クライアントとのインターフェースになっているのは、ビジネス部門なわけです。じゃあ、編集はどこに関わるのかというと、この仕入れの部分なんです。ですから、ぼくは、最近、編集者はどこに対して第一義的に責任を追っているかと言うと、仕入れ先だ、と言っているんです。ぼくらが、こういう人を相手に、こういうものを美味しく食べてもらいたい、と思ったら、それにふさわしい「ネタ」を用意してこないといけない。当然コストは限られているし、ぼくらにはアクセスの及ばない「ネタ」もある。じゃあ、いったいどこかからどうやって、他にはないネタを買うか。これはメディア設計の基本に関わる問題なんです。