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そもそもメディアは誰のものなのか?編集者が担うものに必要なこと【前編】

現在、メディア(業界)論が盛んだ。マスメディアが勢いをなくし、業績を落としていることを論じる議論が一方にあれば、他方では、企業は自らのプライベートなウェブメディアを持ち、顧客に有用な情報を提供するコンテンツマーケティングと呼ばれる新しい手法論に夢中になっている。また、数多ある情報を編成し、読みやすくならびかえ、「キュレーション」するための洗練されたアルゴリズム技術を持つスタートアップ企業に注目が集まり、モバイル時代の新しいメディアプラットフォームは誰が握るのか?といった議論もされている。

しかし、そもそもメディアは、これからの社会の中で、どういう役割を担っていくのか?、目の前の市場環境の激変に目を奪われてしまって、「そもそもメディアとは」という、一番肝心な議論がどうも抜けているようにも思う。そもそもメディアは社会にとってどういう価値があるのか?

世界中のもっとも新しい情報を提供し、もっとも洗練されたデザインとクオリティを持っているメディアの一つである『WIRED』日本版の若林編集長に、「そもそものメディアの役割」についてお聞きしてみた。

Interview by Shusaku Hirota | Photos by Jun Matarai

2015.12.09[Wed]

「暇な人」の価値

廣田:今日は、若林さんに、「そういえば、メディアってそもそもなんだっけ?」というお話を伺おうと思ってやってきました。メディアという存在が、(まさにスマートフォンの普及などもあり)あまりに身近になりすぎているが故に、そのありがたみや、価値が見えにくくなっているようにも思うんです。

僕は、『WIRED』日本版が大好きで毎号読んでいるのですが、『WIRED』って新しい情報が詰まっているだけではなくて、「自分はどういう未来を選択したいのか」と、深く考えさせられる記事が多いなと思うんです。イノベーションの事例や先端カルチャーの「紹介」にとどまらず、それは、自分にとって何を意味するのか?考えてみたら?と言われているような、そういう視座を与えてくれるように思います。自社の製品をさりげない形で押し付けてくるような、企業のオウンドメディアとはやはり根本的に違うものだと思うんです。

若林:僕は、オウンドメディアって、結構難しいものだと思うんです。そこには、どうしても、企業のエゴが出てきてしまいますから。 確かに今、企業とメディアとの関わり方は広がっているけれど、今の企業のメンタリティでオウンドメディアを持っても、それが広告ツールであるという認識が変わらない以上、たいして面白いものはできないんじゃないか、って思ってしまいます。

そもそも、編集者とかジャーナリストとか小説家とか、そういう人たちって、ビジネスの時間軸とは違う時間軸で動いているんですよね。もっと長い時間軸で物事を考えているんだと思うんです。つまるところ、基本的に、編集者は暇人じゃないとだめなんだと思うんです。ビジネスに巻き込まれない、という意味で。

最近よくこんなこと思うんですね。江戸時代を思い浮かべてください。今、江戸のどこかで火事が起きたとします。「火事と喧嘩は江戸の花」って言われていたくらいだから、町人は、みんな火事の現場を見に行きたいんです。でもみんな忙しいから、その場に行けるのって暇な人だけなんです。それで、その暇人が現場を実際に見てきて、「こんな風だったよ」とみんなに伝える、と。こういうことが、原理的にはジャーナリズムの発生なんだと僕は思うんです。いろんなことが起こりうる世の中には、「俺見てくるわ」っていう人が必要で、その人は、時間的にも、物理的にも余裕がないと、そんなことできないんですよね。

同じように、日本橋でもどこでもいいんですが、新しいおそば屋さんができたとします。火事の場合と同じように、みんな本当は自分で行きたいのだけれど、お金や時間の余裕が無くてなかなか行けない。 そんな時に、暇な人が「俺が食ってくるわ」とそこに行って、みんなにどうだったかを伝える。「うまかったよ」だったり、「今いちだなあれは」ということを教えてあげる。で、その情報の対価としてなんらなかの「情報料」をみんなからもらうとしたら、これって、メディアじゃないですか。

ところが、この時、その暇な人が、当のそば屋さんからお金をもらって、「おいしいよ」と言ったとします。これ、いまで言うネイティブ・アド(笑)。こういうものが出てくると、とたんに「情報」というものはややこしくなります。これ「広告」ってものの発生ってことになると思うんですが、このふたつには、やはり決定的な違いがありますよね。

暇な人なんだけど、「なるほどこいつのいうことは確かにあたっているかもしれない。こいつがうまいといったおそば屋さんは確かにうまい。」と思われだすと、その暇人に価値が生まれてくる。しかしその人間がおそば屋さんから金をもらいだすと、話は変わってきてしまう。つまり、暇人が暇人として誰に奉仕しているのか? それが根本的に違うわけですね。前者はおそらくは、社会というもの。後者は、クライアント、ですね。で、情報としてどっちが面白いかと言うと、これは、まあ、普通に考えて前者ですよね。ですから、面白いオウンドメディアというのは、後者のまま面白いわけではなくて、ちゃんと前者としてやってるんだと思うんです。つまり、「暇人」としてやってるから面白いはずなんです。

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廣田:わかりやすいですね(笑)ただ、僕らのこのCOTASも、完全に片手間感あるんですが……。あ、でも僕がいる部署は、もちろん、時間的には忙しいですが、精神的には自由が与えられていて、現業の広告ビジネスの外側にあるような新しいことに挑戦したり、新しい稼ぎ方を創ることを推奨されたりしています。

若林:社内暇人というわけですね。オウンドメディアなんて、かつてはそういう人たちがやってたんじゃないんですかね(笑)。

廣田:僕のやっている仕事の経験で言うと、実は「自由なこと」をやって、それを面白くやりぬいた時が一番うけるなと思います。クライアントにカスタマイズしようとばかりすると、「いえ、うちはそれはすでに知ってますし、やってますから」となるんですが、新しいことを面白くやっていると、クライアント側から声がかかり、いい形でビジネスになることが多々あります。ありがたいことです。実際、業界にカスタマイズした調査をやっても、クライアントのほうが詳しいし、専門性がある。当然、自動車の会社は僕たち以上に自動車のことを考え、調査もしていますからね。でも自動車の会社の方に、今、ファッションとテクノロジーが掛け合わさった世界でこんなことが起きていますよ、と伝えると「面白い」と感じてくれるんです。